プレカリアートユニオンは、学校法人多摩美術大学が当ユニオンとの団体交渉を拒否したこと等について、東京都労働委員会に不当労働行為救済申立てを行っていました。プレカリアートユニオン側代理人は、佐々木亮弁護士、高橋寛弁護士(ともに旬報法律事務所)です。
東京都労働委員会が救済命令を交付
この事件について、東京都労働委員会は、2026(令和8)年6月24日、不当労働行為救済命令書を交付しました。https://www.toroui.metro.tokyo.lg.jp
本件命令では、東京都労働委員会が、学校法人多摩美術大学による2023(令和5)年10月27日付以降の団体交渉拒否について審査し、多摩美術大学が、組合の言動や態度について反省、謝罪、誓約等を求め、その回答を確認してから団体交渉再開に応じるか否かを判断するなど、団体交渉開催に一方的な条件を付して団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否であり、労働組合法第7条第2号に違反するとともに、組合の運営に対する支配介入として同条第3号にも該当すると明確に認定しました。
多摩美術大学に対し団体交渉への誠実な応諾を命令
東京都労働委員会は、主文において、学校法人多摩美術大学に対し、プレカリアートユニオンが同内容の団体交渉を申し入れた場合には、組合がその言動や態度を反省し、今後改めることを担保する方法について提案することなどを団体交渉開催の条件とすることなく、誠実に団体交渉に応じなければならないと命じました。また、多摩美術大学に対し、救済命令に基づく文書の交付及び掲示を命じました。
命令では、同法人が、2023(令和5)年10月27日付で当ユニオンが申し入れた「団体交渉ルール」等9項目を議題とする団体交渉について、組合に反省、謝罪及び誓約を求め、その回答を確認してから団体交渉再開に応じるか否かを判断するなどとして応じず、その後の同内容の団体交渉申入れにも同様の理由で応じなかったことが不当労働行為であると認定されています。
【本件命令の重要な意義1】団体交渉に一方的な条件を付すことは許されない
本件命令の第一の意義は、使用者が「組合の態度が悪い」「まず反省・謝罪・誓約をせよ」などとして、団体交渉開催に一方的な条件を付すことは許されないことを明確に判断した点にあります。
団体交渉は、労働組合法に基づき保障された労働組合と使用者との交渉です。使用者が自ら設定した条件を組合が受け入れなければ団体交渉に応じないという対応は、正当化されないことが改めて示されました。
【本件命令の重要な意義2】団体交渉拒否は支配介入にも該当すると判断
本件命令は、団体交渉拒否が単に労働組合法第7条第2号の問題にとどまらず、組合の運営に対する支配介入、すなわち同条第3号にも該当すると判断した点でも重要です。
使用者が団体交渉を拒否し続けることは、組合活動を停滞させ、組合員に「団体交渉をしても何も変わらない」と諦めを抱かせるものであり、組合の団結及び運営を直接侵害するものであることが改めて確認されました。
【本件命令の重要な意義3】東京都労働委員会が代表権に関する却下主張を排斥
学校法人多摩美術大学は、本件救済申立てについて、プレカリアートユニオンの代表権等を理由として却下されるべきであると主張していました。
しかし、東京都労働委員会は、2025(令和7)年9月の定期大会における手続及び追認を踏まえ、本件申立てが「労働組合の代表権を有しない者が当該労働組合を代表して救済申立てをした場合」には当たらず、却下事由には該当しないと明確に判断した上で、実体判断を行いました。
この判断は、一部の使用者や第三者が、過去の決議不存在確認訴訟判決を口実として、プレカリアートユニオンの代表者性や団体交渉主体性に疑義を唱え、団体交渉を拒否しようとする動きに対し、極めて重要な意味を持ちます。
東京都労働委員会は、本件において、プレカリアートユニオンによる救済申立てを適法なものとして取り扱い、実体判断を行いました。
本命令は、過去の総会決議不存在確認判決を理由として、プレカリアートユニオンとの団体交渉を拒否することは許されないことを東京都労働委員会が明確に示した命令であり、今後、同様の理由を掲げて団体交渉を拒否する使用者に対しても重要な先例となるものです。
【本件命令の重要な意義4】プレカリアートユニオンの法適合性も改めて確認
また、東京都労働委員会は、本件資格審査において、プレカリアートユニオンが労働組合法第2条及び第5条第2項に適合する労働組合であることを確認しています。
これは、プレカリアートユニオンが労働委員会の救済制度を利用する法適合組合であることを改めて確認したものです。
一部請求が認められなかった点について
なお、東京都労働委員会は、2023(令和5)年10月19日に開催された団体交渉において法人側出席者が途中退席した点については、その具体的経過を踏まえ、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとまではいえず、支配介入にも当たらないと判断しました。
一方、その後、多摩美術大学が団体交渉開催に一方的な条件を付し、その後の団体交渉申入れに一切応じなかった対応については、不当労働行為であると明確に認定しています。
プレカリアートユニオンの見解
プレカリアートユニオンは、本命令を重く受け止め、学校法人多摩美術大学に対し、救済命令を誠実かつ速やかに履行し、団体交渉に応じることを求めます。
また、使用者が労働組合の内部運営や代表者性を口実として団体交渉を拒否したり、団体交渉開催に一方的な条件を付したりすることは、労働組合法上許されません。
プレカリアートユニオンは、本件命令を、労働組合の自主性及び団体交渉権を守る重要な命令として評価するとともに、今後も大学・学校法人を含むあらゆる職場において、労働者が安心して声を上げ、団体交渉を通じて労働条件や職場環境を改善できるよう取り組みを続けてまいります。